サステナブル

再生繊維セルロースとは?種類・特徴・メリットから用途まで解説

「環境にやさしい素材」として注目を集めている再生繊維セルロース

レーヨンやリヨセルなど、名前は聞いたことがあるけれど、「実際どんな素材?」「なぜサステナブルなの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、再生繊維セルロースの基礎知識から、種類ごとの特徴、メリット・デメリット、そして主な用途までをわかりやすく解説します。

再生繊維セルロースとは

再生繊維とセルロース繊維の違い

まず「再生繊維」とは、天然素材を化学的に処理して再び繊維状にした素材のことです。

一方「セルロース繊維」は、植物由来の繊維全般を指します。

再生繊維セルロースは、木材や綿花などのセルロースを原料とした再生繊維で、自然由来でありながら、化学的に加工されている点が特徴です。

原料と製造方法の概要

再生セルロース繊維は、主に以下のような原料から作られます。

  • 木材パルプ(ユーカリやブナなどの広葉樹)
  • コットンリンター(綿花の種子周りのうぶ毛)

これらを溶解・再形成することで、細くて柔らかい繊維に再生されます。

製法にはいくつか種類があり、ビスコース法や溶剤紡糸法などが使われます。

環境に優しい素材として注目される理由

再生繊維セルロースが注目される背景には、以下のような理由があります。

  • 植物由来で生分解性が高く、自然に還る
  • 化石燃料に頼らない持続可能な資源
  • 製造工程を改善することで、環境負荷を抑えた生産が可能

そのため、多くのサステナブルブランドやSDGsに取り組む企業が積極的に採用しています。

セルロースは、植物細胞の細胞壁や繊維の主成分であり地球上で最も多く存在する炭水化物(多糖類)であり、人類が摂取する食物繊維の多くもセルロースです。

出典:環境省>第1章 セルロースナノファイバー(CNF)の概要

主な再生セルロース繊維の種類と特徴

レーヨン(ビスコース):光沢とドレープ性の魅力

レーヨンは、再生繊維の中でも最も歴史が長い素材。

シルクのような光沢と美しいドレープ性が魅力で、スカートやブラウスに多用されています。

吸湿性も高く、着心地の良さが特徴ですが、水に弱くシワになりやすいという短所もあります。

キュプラ:コットンリンター由来の高吸湿素材

キュプラは、コットンリンターから作られる高級再生繊維

吸湿性・放湿性に優れており、蒸れにくい快適さが特徴。

裏地やインナーウェアに多く使われています。

静電気が起こりにくく、肌に優しいのもポイント。

リヨセル:環境負荷が低く強度の高い繊維

リヨセル(代表ブランド名:テンセル)は、溶剤を再利用できるエコな製法で作られた素材。

耐久性が高く、摩擦にも強いため、カジュアルウェアからデニム、ホームテキスタイルまで幅広く活躍。

自然な光沢と柔らかさも魅力です。

モダール:柔らかさと吸湿性に優れる素材

モダールはブナ材を原料とするビスコース系繊維。

非常に柔らかく滑らかな肌触りが特徴で、下着やルームウェアに人気です。

リヨセルよりも柔らかく、レーヨンよりも耐久性が高いという中間的な存在です。

ポリノジック:レーヨンの改良版の進化系

ポリノジックは、高湿強度ビスコースとも呼ばれ、レーヨンの弱点を改良した繊維

型崩れしにくく、吸湿性も高いので、ワイシャツや作業着などにも使用されています。

再生セルロース繊維のメリット・デメリット

メリット

  • 生分解性があり、環境負荷が少ない
  • 吸湿性・通気性に優れ、快適な着心地
  • 肌に優しく、静電気が起きにくい

再生セルロース繊維は、天然繊維のような快適さと合成繊維の安定性をバランスよく備えています。

デメリット

  • 水に弱く、濡れると強度が下がる
  • シワになりやすく、アイロンが必要
  • 摩擦や洗濯に弱く、耐久性に注意が必要

扱いやすさではやや難点もありますが、進化した素材ではこのような欠点も徐々に解消されています。

再生セルロース繊維の主な用途

アパレル分野:裏地、ドレス、肌着など

ドレープ性や光沢感を活かして、ワンピースやドレスの表地・裏地として多く使用されています。

肌当たりが良いため、肌着やインナーウェアにも最適

寝具:掛け布団やシーツなどの快適素材

吸湿性が高いため、シーツや掛け布団の側生地として人気。

特にリヨセルやモダールは寝汗を吸収しやすく、快適な眠りをサポートします。

医療・産業資材:ガーゼやワイパー用途

高い吸水性と生分解性を活かして、医療用ガーゼや産業用ワイパーなどにも使用されています。

環境配慮型の使い捨て素材として注目されています。

サステナブル素材としての再生セルロースの可能性

環境配慮型素材としての評価

森林保全や製造工程のクリーン化が進み、再生繊維は循環型社会に適した素材として高く評価されています。

FSC認証やエコラベル取得製品も増加中。

今後の市場拡大や技術革新の動向

リヨセルをはじめとした新素材は、従来のレーヨンよりも高性能かつ低環境負荷

今後、製造コストの低下やリサイクル技術の進展により、より多くの分野での利用が進むと予想されます。

エコファッションやSDGsとの関係性

再生セルロース繊維は、エコファッションブランドに欠かせない素材の一つ。

SDGsの「つくる責任・つかう責任」や「気候変動対策」にも貢献し、サステナブルな未来を支える鍵となる存在です。

まとめ

再生セルロース繊維の魅力と課題

再生セルロース繊維は、天然由来の心地よさと化学繊維の機能性を兼ね備えたハイブリッドな素材。

環境に優しく、多用途に使える点が魅力です。

一方で、水や摩擦に対する弱さといった課題もあります。

エコ意識の高まりと選ばれる理由

環境への配慮が重視される今、再生繊維セルロースは「選ばれる素材」から「選ぶべき素材」へと変わりつつあります。

特にファッション業界では欠かせない存在に。

自分に合った素材選びのヒント

最後に、衣類や生活用品を選ぶ際は、快適さ・用途・環境負荷をバランスよく考えるのがポイント。

再生セルロース繊維は、そうした選び方を後押ししてくれる素材です。

  • この記事を書いた人

ウェルビー

医療従事者 | 学会発表 | 良い状態(well-being)を叶えるために"サステナブル"に関わる様々な情報について発信していきます

-サステナブル