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ジベレリン処理は危険?安全性とリスクを正しく理解しよう

スーパーで見かける「種なしぶどう」や「形の整った果物」。

これらの生産には、「ジベレリン」と呼ばれる植物ホルモンの処理が関わっています。

でも一部の消費者の間では「ジベレリンって体に悪いの?」「ホルモン剤って危険そう…」といった不安の声も。

この記事では、ジベレリンの正体とその安全性、リスクに関する科学的根拠をやさしく解説します。

誤解や不安を解消し、安心して果物を楽しむための知識をお届けします。

ジベレリンの概要とその利用目的

ジベレリンとは?

ジベレリン(Gibberellin)は植物が自然に生成する成長ホルモンの一種です。

植物の発芽・成長・開花・結実といったプロセスに深く関与しており、1930年代にイネの病害研究から発見されました。

ジベレリンとは植物ホルモンの一つで、植物ホルモンは植物自身がつくりだし、極めて低濃度で植物の成長や開花、結実、成熟などさまざまな生理作用を調整する物質です。

出典:タキイネット>果樹に関するQ&A

どうやって使われるの?

農業では、ジベレリンを人工的に合成し、植物に散布することで以下のような目的で利用されています。

  • 種なし果物の生産(特にブドウやカキ)
  • 果実の肥大促進
  • 花芽の形成促進
  • 発芽の促進(休眠打破)

種なし果物の生産におけるジベレリンの役割

なぜジベレリンで種がなくなるの?

通常、果物が実をつけるには受粉・受精が必要です。

ジベレリンは、受粉を行わなくても果実が成長する「単為結果(たんいけっか)」を促進します。

つまり、種を作らずに果実を肥大化させることが可能になるのです。

実際にどう使われている?

たとえば、種なしブドウの栽培では開花前後に数回、ジベレリン液に房ごと浸ける処理が行われます。

これにより、粒が大きくなり、種が形成されない高品質な果実ができます。

ジベレリンの安全性に関する評価

食品安全委員会による毒性試験の結果

日本の食品安全委員会は、ジベレリンの毒性について複数の動物実験を通じて評価を実施。

その結果、通常の摂取レベルでは急性毒性・慢性毒性・発がん性ともに確認されなかったと報告されています。

一日摂取許容量(ADI)の設定とその根拠

ジベレリンにはADI(Acceptable Daily Intake:一日摂取許容量)が設定されており、その値は「0〜0.03 mg/kg体重/日」となっています。

これは、安全性を十分に考慮したうえで、生涯にわたって毎日摂取しても健康に影響がない量を示しています。

国際的な評価と規制状況

ジベレリンは日本のみならず、米国、欧州連合、オーストラリアなどの多くの国で農薬として登録されており、安全性が認められている物質です。

国際機関であるFAO(国連食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)も、安全な使用基準を策定しています。

潜在的なリスクと懸念点

動物実験における発がん性の報告

一部の古い研究では、高濃度でジベレリンを投与したラットにおいて発がん性の兆候が見られたという報告もあります。

ただし、これは極端な条件下での話であり、現在の使用濃度・摂取量とはかけ離れています。

住友ジベレリン粉末の安全データシートに記載された注意事項

メーカーが提供するMSDS(化学物質安全性データシート)には、「吸入や皮膚接触の際に注意」などの記載がありますが、これは作業者向けの注意喚起です。

一般消費者が果物を食べて問題になるレベルではありません。

消費者の間での不安や誤解

「ホルモン剤=人体に悪影響」といったイメージが独り歩きすることもありますが、ジベレリンは人のホルモンとは全く異なる構造を持ち、ヒトの体内では作用しません。

科学的知識が不足すると、誤解や不安につながるのが現状です。

ジベレリン処理の実際とその影響

農業現場でのジベレリンの使用方法

ジベレリンは主に液体の形で使用され、果実や花に直接スプレーまたは浸漬します。

使用量や時期は作物ごとに細かく管理されており、農薬使用基準に基づいて適切に運用されています。

ジベレリン処理による果物の品質向上

処理された果物は、以下のようなメリットがあります。

  • 種がなくて食べやすい
  • 果粒が大きくて見栄えが良い
  • 均一な品質で流通に適している

これにより、消費者満足度が高まり、農家の収益にもつながる好循環が生まれています。

消費者が知っておくべきポイント

  • ジベレリンは自然界にも存在する成分
  • 適切に管理された農薬であり、摂取しても問題ない
  • 科学的な根拠に基づいて安全性が確認されている

まとめ:ジベレリン処理の安全性と今後の展望

科学的根拠に基づく安全性の確認

これまでの研究と各国の評価機関の見解により、ジベレリンは食品としての安全性が高いことが確認されています。

過剰な不安を抱える必要はなく、通常の消費において健康リスクはありません。

消費者への情報提供の重要性

安全であっても、「何に使われているのか」「どう作用するのか」を知らなければ不安になるのは当然です。

だからこそ、わかりやすい情報提供と透明性が求められています。

持続可能な農業と食品安全のバランス

ジベレリン処理は、農業の効率化と消費者の利便性を両立させる技術です。

今後も科学的な根拠に基づいて、安全性を確認しつつ、持続可能な農業の一環として活用されていくでしょう。

  • この記事を書いた人

ウェルビー

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